物件案内の事前準備について検索すると、出てくるのは当日の段取りの話がほとんどです。20〜30分前に現地入りして換気する、スリッパを用意する、カーテンを開けて照明を全部つける。どれも大事ですし、プロの知見として正しいと思います。
ただ、案内の準備にはもう一つ、当日の段取りより前に済ませておくべき仕事があります。物件の「周辺」の下調べです。
お客様が案内中に聞いてくるのは、物件そのものより周辺のことが多い。「小学校はどこですか」「保育園は入れそうですか」「病院は近くにありますか」「このへん、相場的にどうなんですか」。ここで「確認して折り返します」を繰り返すと、案内の熱が冷めます。
この下調べ、真面目にやると学区・保育園・公園・医療・相場・地域の最近の話題……と調べる先がバラバラで、30分は消えます。当社はこれを駅名を入れるだけ・30秒にしました。この記事では、実際の画面をそのままお見せします。
「小平駅徒歩10分」と打ちます。それだけです
例として、西武新宿線の小平駅を使います。当社の地価ナビの駅検索に「小平駅徒歩10分」と、営業の現場で飛び交う言葉のまま打ち込みます。駅名だけでも構いません。候補から駅を選ぶと、以下が1画面に出ます。すべて実際のスクリーンショットです。
「30秒」は誇張ではなく実測です。駅名を打って候補を選ぶまでが数秒、地図と施設・トークの表示はほぼ即時。唯一「最近の地域の動き」だけは、その地域を誰も開いたことがない初回に限り30秒ほどの生成待ちが入ります(2回目からは24時間キャッシュで即時表示)。つまり前日の夜に一度開いておけば、当日は全部一瞬で出ます。
① 地図と徒歩圏——「駅からこのへん」が一目で

駅を中心に、徒歩5分(400m)と徒歩10分(800m)の目安円が出ます。地図は国土地理院のものです。お客様に「徒歩10分ってどのあたりまでですか」と聞かれたとき、口で説明する代わりにこの画面を見せられます。
1つ注意があり、画面にも明記しています。この円は直線距離の目安です。不動産広告の徒歩分数は道路距離(1分=80m)で計算する決まりなので、この円をそのまま広告に使うことはできません。あくまで社内の下調べと、商談での説明用です。広告表記のルールは別の記事に整理しています。
② 周辺施設の実数——「小学校はどこ?」に即答できる

徒歩10分圏(直線800m円内)の施設の数が出ます。小平駅なら小学校2校・保育園幼稚園等6か所・中学校1校・公園4か所・病院1件・診療所16件。そして最寄りの小学校は小平市立小平第十四小学校(直線約674m)、最寄りの公園は狭山・境緑道(直線約98m)と、名前と距離まで出ます。
「お子さんの小学校は第十四小で、直線700mほどです。緑道が駅のすぐ北にあるので、週末の散歩コースにされている方が多いエリアです」——ここまで言えると、案内の会話が変わります。出典はすべて国土数値情報(学校=令和5年度・医療機関=令和2年度・福祉施設=令和5年度・都市公園=平成23年度)です。
③ 営業トークと想定問答——読み上げられる形で

数字を並べるだけでなく、そのまま話せる文章になって出てきます。ファミリー向けの切り出し、駅の需要(乗降客数1日3.5万人・増加傾向)、相場の基準線(東京都平均坪単価170万円・前年比+6.2%)。「この値段は高くない?」のような答えにくい質問への回答例も付きます。相場データの中身を自分で確かめたい方は土地の相場を無料で調べる3つの方法をどうぞ。
最後に「次の行動」が1つだけ出ます。やることリストを5個並べるのではなく1つに絞っているのは、その場で実行してもらうためです。全文コピーのボタンがあるので、案内メモや追客メールにそのまま貼れます。
なお、このトーク部分は生成AIを使っていません。実データの数字を型に流し込む方式なので、商談で口にする数字が創作される事故が構造的に起きません。この設計判断の背景は前回の記事に書きました。
④ 最近の地域の動き——ベテランの「雑談ネタ」まで

統計だけでは出てこない「旬の話」も並びます。小平駅の場合、新府中街道の延伸・西武線をくぐるアンダーパス整備など、地元の交通インフラの動きが出典・日付つきで出ました。案内の道すがら「この道、いま延伸工事をしていて……」と話せるのは、これまで地元のベテランだけの芸当でした。
ここは逆にAIの出番で、地域のニュースをRSSで集めてAIが選別・要約しています。ただしAIが扱えるのは実在の記事だけ(創作できない構造)、出典は必ず併記、そして災害のニュースは営業機会としてではなく「留意点」として表示します。スクリーンショットにも大雨警報の記事が赤い「留意点」ラベルで入っています。水害リスクを隠して売る営業を、当社のツールは手伝いません。
数字はどこまで信用できるのか
ツールの紹介記事は普通ここで終わりますが、営業が商談で使う数字なので、精度の話を正直に書きます。
この施設データは、集計の全国合計を国の公表統計と突き合わせて検証しています。小学校の集計19,189校に対し、文部科学省の学校基本調査は小学校18,980校(義務教育学校を合わせてほぼ一致)。病院の集計8,269件に対し、厚労省の医療施設調査は8,238施設。個別の駅でも、土地勘のある駅を開いて実際の街と突き合わせる検品をしています。
限界も2つあります。①公園データは国の公開が平成23年度版で止まっており、新しい公園は載らないことがあります。②距離は直線の目安です。この2つは言い訳として隠すのではなく、画面にそのまま明記しています。営業がお客様に嘘の根拠を持たされるのが一番困るからです。
他の駅ではどう出るか——2つだけ例を
小平駅がたまたま綺麗に出る駅なのでは、と思われるかもしれないので、性格の違う駅を2つ挙げます。どちらも実際に画面を開いて確認した数字です。
朝霞台駅(東武東上線・埼玉県朝霞市)。乗降14.9万人/日の大型駅で、徒歩10分圏に小学校2校(最寄りは朝霞市立朝霞第七小学校・直線約678m)・保育園幼稚園等17か所・公園8か所・病院3件・診療所31件。都心通勤のベッドタウンの典型で、ツールはファミリー向けのトークを自動で選びます。
新宿駅。徒歩10分圏の小学校は0校。診療所は284件。ここで大事なのは、ツールが無理にファミリー向けと言わないことです。小学校と保育施設が揃わない駅では、トークは「生活利便」(医療・利便の数)に自動で切り替わります。データにない訴求を作らない、はツール全体を通したルールです。
つまり駅の性格——ファミリーの街か、単身・商業の街か——が、数字と一緒に出てくる。営業が「この駅は誰に売る駅か」を考える出発点になります。
よくある質問
Q. 担当エリアが地方でも使えますか?
A. 全国約9,200駅を収録しています。施設が少ない駅では少ないなりの数字が正直に出ます(北海道の秘境駅・比羅夫では全項目ゼロでした)。「何もない」ことが分かるのも下調べの成果のうちです。
Q. この画面をお客様に渡していいですか?
A. 画面を見せながら話すのは問題ありませんが、印刷して配る資料には向きません。徒歩円は直線距離の目安なので、広告や配布物の徒歩表記は道路距離での算出が必要です。お客様に渡す資料は、地価ナビのレポート機能(出典・免責つき)をお使いください。
Q. 料金はかかりますか?
A. この記事で紹介した駅検索(地図・施設・トーク・地域の動き)は無料プランで使えます。課金の壁はレポートの透かし・通数などアウトプット側にあり、閲覧と検索は無制限です。
案内前日の3分に組み込んでください
使いどころは、冒頭の「当日の段取り」の一つ前です。
- 案内の前日夜:物件の最寄り駅を検索して、営業トークを全文コピー→案内メモに貼る(1分)
- 施設の数字だけ頭に入れる:小学校・保育園・公園の数と最寄りの名前。覚えるのは5つで足ります(1分)
- 「最近の動き」を1つ選ぶ:道すがらの雑談用。出典元の記事を開いて中身を確認しておくとより安全です(1分)
当日の下見・換気・スリッパはこれまでどおり。周辺の下調べだけが30分から3分になります。新人とベテランの差が最初につくのはこの下調べなので、チームで同じ画面を見る運用にすると、教える側の時間も浮きます(この話は属人化の記事で詳しく書いています)。
まとめ
- 物件案内の事前準備は「当日の段取り」と「周辺の下調べ」の2つ。時間を食うのは後者
- 地価ナビの駅検索は「小平駅徒歩10分」のような言葉のままの入力で、地図・施設の実数・営業トーク・想定問答・次の行動・地域の最近の動きを1画面に出す
- 数字は全国合計を公表統計と照合済み。限界(公園データの年度・直線距離)は画面に明記
- 災害ニュースは営業機会ではなく留意点として表示する設計
- 無料プランで使えます。案内前日の夜に一度開いておけば、当日はすべて即時表示。前日3分の習慣に組み込むのが推奨の使い方
※画面は2026年8月29日時点の実際の表示です。施設データの出典は国土数値情報(学校=令和5年度・医療機関=令和2年度・福祉施設=令和5年度・都市公園=平成23年度)。地図は地理院タイル(淡色地図)を使用しています。地域の動きはAIがニュースRSSから収集した参考情報で、内容は出典元でご確認ください。