ブログ
記事一覧開発を相談する
2026-08-26

物件紹介文に「格安」「掘出」と書けますか|根拠が要る言葉と、公的データでの作り方

物件紹介文を書いていて、手が止まることがあると思います。「格安」と書いていいのか。「お買い得」は言い過ぎではないか。

これは感覚の問題ではなく、ルールがあります。不動産の表示に関する公正競争規約で、使うのに根拠が必要な用語が具体的に決まっています。

この記事では、規制の対象になる言葉を整理したうえで、公的データで根拠を作る手順と、AIに書かせるときに気をつけることをまとめます。

根拠が必要な言葉は、具体的に決まっています

不動産の表示に関する公正競争規約は、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)にもとづき、公正取引委員会の認定を受けた業界の自主ルールです。

この規約では、価格や賃料について著しく安いという印象を与える用語が規制の対象とされています。

規制の対象になる用語(例)使うために必要なもの
買得掘出土地値格安投売り破格特安激安バーゲンセール安値 など、著しく安いという印象を与える用語比較の対象となる価格と、その根拠(過去の販売価格、市場相場との比較など)

ここで大事なのは、「使ってはいけない」ではないことです。根拠があれば使えます。逆に言えば、根拠となる価格比較が示せないまま使うと、不当な価格表示に当たる可能性があります。

「なんとなく相場より安いと思うから」では足りません。何と比べて安いのか、その比較対象が確かなものか。そこまで用意して初めて書ける言葉です。

宅建業法にも、別の規定があります

規約とは別に、宅地建物取引業法第32条に誇大広告等の禁止があります。条文はこうです。

宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法……について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

対象は価格だけではありません。所在、規模、形質、利用の制限、環境、交通の利便まで含まれます。

つまり「駅から徒歩5分」「日当たり良好」「閑静な住宅街」といった表現も、実際と著しく違えば対象になります。価格の言葉だけ気をつけていれば済む話ではありません。

徒歩分数にも、計算のルールがあります

価格の言葉と並んで、間違いが起きやすいのが徒歩分数です。ここも規約で決まっています。

道路距離80メートルにつき1分として計算し、1分未満の端数は切り上げます(不動産の表示に関する公正競争規約施行規則)。

道路距離計算表示
道路距離 400m400 ÷ 80 = 5.0徒歩5分
道路距離 760m760 ÷ 80 = 9.5徒歩10分(端数は切り上げ)
道路距離 60m60 ÷ 80 = 0.75徒歩1分(徒歩0分は存在しない)

切り上げなので、「徒歩0分」という表示は存在しません。どれだけ近くても最短で徒歩1分です。

そして直線距離ではなく道路距離です。地図上で線を引いた長さではなく、実際に歩く経路の距離で計算します。

令和4年9月1日に、起点のルールが変わりました

この改正は見落とされがちです。

改正前は、その施設から最も近い物件(敷地)の地点を起点または着点としていました。改正後、マンションの起点は建物の出入口とされました。

敷地が広いマンションでは、これで分数が変わることがあります。敷地の角から測っていた時代の数字が、そのまま資料に残っていないでしょうか。過去に作った資料を流用するときは、この改正より前のものかどうかを見てください。

その表現、現地で確認しましたか

宅建業法第32条が対象にしているのは、価格だけではありません。環境や交通の利便も含まれます。

実務で危ないのは、次のような言葉です。

これらは写真と図面だけでは書けない情報です。現地を見ていない人が資料から起こすと、事実と離れます。

AIに書かせる場合はなおさらで、渡していない情報は書かせないという指示が要ります。渡した情報の範囲で書く、と決めておくだけで、この種の表現はかなり減ります。

いま、この問題が増えている理由

物件紹介文をAIに書かせる会社が増えました。速いし、文章として読みやすいものが出てきます。

ただAIは、規約を知らないまま書きます。

実際に指示を出してみると分かりますが、「この物件の魅力的な紹介文を書いて」とだけ頼むと、AIは高い確率で「お買い得」「掘出物件」「破格」といった言葉を入れてきます。読み手を動かす言葉として自然だからです。

そしてこれらは、まさに規約が規制対象として挙げている用語です。

危ないのは、AIの文章がそれらしく整っていることです。誤字も無く、構成も読みやすい。だから確認が甘くなります。手書きなら「これは言い過ぎかな」と一度止まる場面で、止まらずに公開されます。

AIを使うこと自体は問題ありません。指示の出し方と、出てきた文章の確認のしかたを決めておく必要があるということです。

公的データで根拠を作る

では、根拠はどこから取るか。無料で使える公的データがあります。

これらの調べ方は土地の相場を無料で調べる方法に手順をまとめています。

市区町村ごとの坪単価と前年比を、出典つきで整理したレポートも無料で公開しています。商談で数字を出すときの引用元として使えます。

書き分けの例

実際にどう変わるかを並べます。

避けたい書き方根拠を入れた書き方
この価格は格安です。近隣の成約事例(国土交通省の不動産情報ライブラリ・直近1年・同一地域・同規模)の平均が坪◯万円のところ、本物件は坪◯万円です。
お買い得な掘出物件。同じ駅徒歩10分圏・築年数±5年の売出中物件◯件の中央値と比較して、坪単価で◯万円下回っています(◯年◯月時点)。
相場より安い土地値。この地点の地価公示は1平方メートルあたり◯円(令和◯年)。本物件の売出価格から算出した単価は◯円です。
駅近で便利な好立地。◯◯駅まで徒歩8分(道路距離約620m)。半径500m以内にスーパー2軒、小学校1校があります。

右側は長くなります。ただ長くなったぶん、そのまま根拠になります。「なぜその価格なのか」を売主や買主に聞かれたときに、同じ文章がそのまま答えになります。

そして右側の書き方には、もう一つの効果があります。他社の紹介文と並んだときに、内容で差がつきます。「お買い得」はどの物件にも書けますが、「近隣の成約事例の平均が坪◯万円のところ本物件は坪◯万円」は、その物件にしか書けません。

AIに書かせるときの指示のしかた

AIを使う場合、指示に次の3つを入れておくと、出てくる文章が変わります。

  1. 使わない言葉を明示する
    「格安・掘出・破格・激安・お買い得・バーゲンといった、安さを強調する語は使わないでください」と書いておきます。AIは指示された禁止語をよく守ります
  2. 根拠になる数字を先に渡す
    近隣の成約事例の平均、地価公示、駅からの道路距離。これを渡さずに書かせると、AIは形容詞で埋めます。数字があれば、数字で書きます
  3. 断定しない範囲を指定する
    「日当たり」「閑静」など現地確認が必要な表現は、渡した情報の範囲を超えて書かないよう指示します

この3つを毎回書くのは手間なので、定型の指示文として用意しておくのが現実的です。物件ごとに変わるのは数字だけなので、そこだけ入れ替えれば済みます。

まず1本、定型の指示文を作ってください

ここまで読んで「毎回これを確認するのは無理だ」と思われたかもしれません。そのとおりだと思います。

現実的な解は、判断を毎回やらないことです。使わない言葉のリストと、渡す情報の型と、確認する3か所。これを1度決めて文章にしておけば、次からはそれを貼るだけになります。

物件ごとに変わるのは数字だけです。近隣の成約事例の平均、地価公示、道路距離、面積、築年。この欄を埋め替えれば、あとは同じ指示が使えます。

逆に、毎回ゼロから指示を書いていると、その日の忙しさで抜けが出ます。抜けるのはたいてい「使わない言葉」の指定です。急いでいるときほど「いい感じに書いて」と頼んでしまう。

1本作っておけば、それが起きません。

送信前に見るのは3か所です

出てきた文章を、全部読み直す必要はありません。事故が起きるのは、だいたい同じ場所です。

3つ目がいちばん見落とされます。AIは自然な文章にするために、無い情報を補うことがあります。読みやすいほど気づきにくいので、ここだけは指差しで確認してください。

書いた紹介文を送ったあとの管理は別の話です。反響・追客をExcelからシステムへ移すときの順番もまとめています。

まとめ

※本記事は2026年8月26日時点の公表情報にもとづく一般的な解説であり、法的助言ではありません。個別の広告表現の可否は、所属する不動産公正取引協議会または専門家にご確認ください。

指示文を毎回書かなくて済む形にできます。

不動産営業向けAIプロンプトパック(50本・¥3,000)は、物件紹介文・広告・SNS・ポータルPR文から、反響の一次返信・追客まで、空欄を埋めるだけで使える形にしてあります。法令注意つきの始め方ガイドと、送信前チェックの手順書つき。買い切りです。

不動産向けテンプレートを見る →
© Khorai / あらゆる分野の業務を、データとAIで仕組みに。 会社サイト記事一覧