産業廃棄物を出している事業者にとって、毎年6月30日は交付等状況報告書の提出期限です。これはよく知られています。
ただ、同じ6月30日を期限とする届出が、もう1つあります。PCB廃棄物を保管している場合です。
そして低濃度PCB廃棄物には、令和9年3月31日という処分期限があります。ここから逆算すると、残りは約1年7か月です。
6月30日に出すものは、2つあります
| 6月30日までに出すもの | 根拠 | 対象 | 主な記載事項 |
|---|---|---|---|
| 産業廃棄物管理票 交付等状況報告書 | 廃棄物処理法 第12条の3第7項 | 前年度に紙マニフェストを交付した事業者 | 種類×運搬受託者×処分受託者の組み合わせごとの交付枚数と排出量 |
| PCB廃棄物の保管及び処分状況等届出書 | PCB特別措置法 | PCB廃棄物を保管している事業者 | 保管しているPCB廃棄物の種類・量・保管場所と、前年度の処分状況 |
1つ目は、紙マニフェストを交付していれば必要になるものです。書き方は別の記事にまとめました。
2つ目は、PCB廃棄物を保管していれば必要になります。根拠が違う法律なので、産廃の担当者が知らないまま来ていることがあります。
ここで問題になるのは、そもそもPCB廃棄物を保管していることに気づいていない場合です。「うちにPCBなんて無い」と思っている事業所に、実際にはあることがあります。
低濃度PCB廃棄物とは何か
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、かつて電気機器の絶縁油などに使われていた物質です。現在は製造・使用が禁止されています。
環境省の説明では、PCBが基準の0.5mg/kg(ppm)を超えた濃度で汚染されているものが低濃度PCB廃棄物にあたります。
ここが分かりにくいところです。PCBを使うつもりで作られた機器ではなくても、微量に混入していれば該当します。だから「PCB入りの機器を買った覚えはない」は、該当しない理由になりません。
どの機器が該当し得るのか
環境省が具体例として挙げているのは、自家用電気工作物に関わるものです。
| 機器 | 目安 |
|---|---|
| 絶縁油を交換できる変圧器 | 平成5年(1993年)以前に製造されたもの |
| 絶縁油が封じ切りのコンデンサー | 平成2年(1990年)以前に製造されたもの |
| 電気溶接機・X線照射装置 | 内部のコンデンサーが対象になり得る |
| 昇降機・分電盤・モーター等 | 付属または内蔵するコンデンサーが対象になり得る |
製造年が目安になります。絶縁油を交換できる変圧器は平成5年(1993年)以前、絶縁油が封じ切りのコンデンサーは平成2年(1990年)以前のものが対象になり得ます。
注目していただきたいのは、昇降機・分電盤・モーターに「付属または内蔵する」コンデンサーが挙がっていることです。単体の変圧器を探しても見つかりません。機器の中に入っています。
古い設備を使い続けている工場・倉庫・ビルほど、確認の対象が多くなります。
処分期限は令和9年3月31日です
低濃度PCB廃棄物の処分期間は、PCB特別措置法により令和9年(2027年)3月31日で終了します。
これは「それまでに処分業者へ引き渡せばよい」ではなく、処分を完了させる期限です。無害化処理の認定を受けた施設等で処理を終える必要があります。
期限を過ぎても保管し続けている場合、法令違反として改善命令などの行政処分の対象になり得ます。PCB特別措置法には第31条から第33条に罰則の規定があります。
もう一つ実務的な問題があります。処理施設の受け入れには限りがあります。期限が近づくほど混み合うので、早い時期に動いたほうが選択肢が広くなります。
低濃度PCB廃棄物は「特別管理産業廃棄物」です
ここが、日々のマニフェスト運用に効いてきます。
低濃度PCB廃棄物の保管には、廃棄物処理法の特別管理産業廃棄物保管基準が適用されます。飛散・流出・地下浸透・悪臭の防止などが求められます。
そして特別管理産業廃棄物は、マニフェストの返送期限が通常の産業廃棄物と違います。
- 通常の産業廃棄物 … B2票・D票は交付から90日
- 特別管理産業廃棄物 … B2票・D票は交付から60日
- E票(最終処分)はいずれも180日
30日の差があります。同じ台帳で管理していると、ここを取り違えます。「90日でまだ大丈夫」と思っていた伝票が、実は期限を過ぎているということが起こります。
返送期限の全体像は別の記事にまとめてあります。
2026年8月20日に、告示が改正されました
直近の動きも書いておきます。
2026年8月20日、環境省が「無害化処理に係る特例の対象となる一般廃棄物及び産業廃棄物の一部を改正する告示」および「低濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る無害化処理の内容等の基準等の一部を改正する告示」の公布を発表しました。
無害化処理の対象と基準に関わる改正です。処分期限が令和9年3月31日に迫るなかで、処理の枠組みが見直されている時期にあたります。
詳細は環境省の公表資料をご確認ください。制度が動いている最中なので、処分の相談は早いほうが情報も新しくなります。
「うちには無い」が、いちばん多い誤解です
この制度でつまずく最大の理由は、悪意でも先送りでもなく、該当する機器を持っている自覚が無いことだと思います。
理由は3つあると考えています。
- PCBを買った覚えがない … 低濃度PCB廃棄物は、微量に混入していれば該当します。「PCB入りの機器」として売られていたものだけが対象ではありません
- 機器の中に入っている … 昇降機、分電盤、モーター、電気溶接機。外から見て分かりません。設備台帳に「変圧器」と書いていなければ、探しても出てきません
- 担当者が代わっている … 平成5年以前の機器は、当時を知る人がもう社内にいないことがあります。誰も更新していない台帳だけが残ります
3つ目が厄介です。設備の記録が引き継がれていないと、調べる起点そのものがありません。結果として「たぶん無い」で止まります。
これは産業廃棄物の管理と同じ構造です。台帳が実態を映していないと、何を管理すべきかも分かりません。マニフェストの返送期限を追えないのも、PCBの該当機器に気づけないのも、元は同じところに原因があります。
期限が2つ重なる年になります
整理しておきます。産業廃棄物を出す事業者にとって、これから来る期限はこう並びます。
- 日々 … マニフェストの返送期限。通常のB2・D票は90日、特別管理産業廃棄物は60日、E票は180日
- 毎年6月30日 … 交付等状況報告書。PCB廃棄物を保管していれば、保管等の届出も
- 令和9年3月31日 … 低濃度PCB廃棄物の処分期間の終了
日々の期限、年1回の期限、一度きりの期限。種類が違うので、同じ方法では管理できません。
日々の期限は仕組みで見張るしかありません。件数が多く、期日が伝票ごとに違うからです。年1回の期限は、集計できる形で台帳を持っていれば出せます。そして一度きりの期限は、まず該当するかどうかを調べるところからです。
順番としては、いちばん最後のものが最初です。令和9年3月31日までに処分を完了させるには、逆算すると調査と見積もりの時間が要ります。残り約1年7か月というのは、設備の調査から処分完了までを考えると、そこまで長くありません。
何から始めればいいか
- 自家用電気工作物の台帳を見る
変圧器・コンデンサーの製造年を確認します。平成5年以前・平成2年以前が目安です。台帳が無ければ、機器の銘板を見ることになります - 機器の中にあるものを忘れない
昇降機、分電盤、モーター、電気溶接機、X線照射装置。単体で置いていない分、見落とされます - 使用中か廃棄物かで届出先が変わる
使用中の自家用電気工作物は電気事業法にもとづき産業保安監督部へ、廃棄物はPCB特別措置法にもとづき管轄の自治体へ届け出ます - 処分の相談を先にする
処理施設の受け入れ枠は無限ではありません。期限が近づくほど混みます
なお、この記事はPCB廃棄物そのものの処理方法を案内するものではありません。該当するかどうかの判断、届出、処分の手続きは、管轄の自治体・産業保安監督部・無害化処理の認定を受けた処理業者にご確認ください。ここで扱っているのは、期限を落とさないための管理のほうです。
まとめ
- 毎年6月30日の提出物は、産廃を出す事業者にとって2つある場合がある(交付等状況報告書と、PCB廃棄物の保管等届出)
- 低濃度PCB廃棄物はPCBが0.5mg/kgを超えて汚染されているもの。使うつもりで買っていなくても該当し得る
- 変圧器は平成5年以前、封じ切りコンデンサーは平成2年以前が目安。昇降機・分電盤・モーターの内蔵品も対象になり得る
- 処分期限は令和9年3月31日。引き渡しではなく処分の完了が必要
- 低濃度PCB廃棄物は特別管理産業廃棄物。マニフェストのB2・D票は60日で、通常の90日と30日ちがう
※本記事は2026年8月26日時点の公表情報にもとづく一般的な解説であり、法的助言ではありません。該当の判断・届出・処分の手続きは、管轄の自治体、産業保安監督部、または処理業者にご確認ください。